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アークエッジ・スペース、船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証事業に採択

株式会社アークエッジ・スペース(本社:東京都江東区、代表取締役 CEO:福代孝良、以下「アークエッジ・スペース」)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」)が公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム/船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証」に株式会社IHI(本社:東京都江東区、代表取締役:井手博、以下「IHI」)およびLocationMind株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:桐谷直毅、以下「LocationMind」)とともに応募し、2023年3月17日(金)に採択され、事業を開始しますことをお知らせします。

本事業では、3者の技術力を生かして、国内初となる船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証を実施していく予定です。

アークエッジ・スペースは、これまで培ってきた超小型人工衛星の設計・運用ノウハウを活用して、船舶・海洋を対象とした双方向通信を実現するVDES(*)、及び海洋状況把握に対応する新型の超小型衛星の開発・実証を進めるとともに、同衛星を宇宙に多数配置して実施する衛星コンステレーション実証を通じて将来の世界規模でのサービス提供に向けた体制構築を進めます。

VDES衛星コンステレーションを通じて集められた海事情報は、IHI、LocationMindも含めた3社の協力体制の下で構築されるデータプラットフォームに集約・共有されて、海洋における安全・安心の確保の確保、海洋DX(デジタルトランスフォーメーション)の達成、港湾・物流管理の効率化等の実現に寄与することが期待されます。

VDES衛星による海洋DXと海洋状況把握

  • VDESは、VHFデータ交換システム(VDES: VHF Data Exchange System)の略称。洋上を航行する船舶の航行情報を他の船舶や陸上局と交換するためのシステムであり、SOLAS条約に基づき、衝突予防、人命安全等の観点から、特定の条件を満たす船舶への搭載が義務付けられているAIS(船舶⾃動識別装置)の次世代型としてAIS2.0と呼ばれることもある。AISと比べて、通信速度の向上、双方向通信の実現等の機能拡張が行われており、今後の船舶識別や安全航行、海上のデジタル化の基盤インフラとして活用することが期待されている。

【事業背景】
政策的な重要性
日本が地政学的優位性を利用し 「自由で開かれたインド太平洋構想」を実現するため、宇宙を活用した我が国 周辺海域、及びシーレーン周辺海域の海洋状況把握(MDA、Maritime Domain Awareness)を行う能力の強化が必要となってきています。

海洋状況把握に関する課題
2002 年から AIS の装備が条約によって一部の船舶に義務づけられ、衛星を利用した地球規模での船舶動静(動的情報、静的情報、航海関連情報等)の把握が可能になりました。しかし、AIS 搭載の船舶が外航船や一定トン数以上の内航船舶に限られることから、漁船や小型船による搭載が進んでおらず、海上保安業務についても AIS 信号の断絶やスプーフィング(測位衛星信号の欺瞞によるなりすまし) が行われる等により、MDA の情報としては信頼性が十分でないのが現状です。 また、AIS 信号は海上の近距離で情報を交換することを前提に設計されている ため、宇宙で受信した場合、信号の衝突による抜けが多く、また、リアルタイムでない等、信頼性のあるデータの取得に限界があります。

海洋状況把握についての期待
海洋における脅威・リスク等の早期察知に資する情報収集体制に関連して、「すべての船舶の動静が把握されている状況ではない」現状を抜本的に改善する宇宙インフラを活用した自律的な MDA 能力をもつことは重要です。また、我が国の社会経済活動を担う安心・安全な海上交通輸送システムの運用を支える海上保安業務に関しても、宇宙インフラを活用した双方向通信が、海上安全情報の提供や航行援助・海上交通管制の能力を高めることに大きく役立つことが期待されています。

上記の課題認識と期待の高まりを受け、本事業での研究開発を推進していきます。本事業では、我が国が国際標準化を主導してきたVDESをベースに、宇宙から船舶動静情報を網羅的に収集するMDAのための衛星技術及び、双方向通信 による海事情報の集約・共有を行うためのデータプラットフォーム技術の研究開発を実施します。

【事業期間】
2022 年度から 2029 年度までの 8 年間

事業採択に関する詳細: https://www.nedo.go.jp/koubo/SM3_100001_00034.html

【株式会社アークエッジ・スペースについて】
アークエッジ・スペースは、東京大学で培った超小型人工衛星の開発技術や利活用技術を元に事業化を行うことを目的として2018年に創業しました。現在、超小型人工衛星を中心とする多種類複数の人工衛星生産体制を構築し、超小型人工衛星、地上局整備、関連部品の設計・製作などのハードウェア事業に加え、人工衛星運用サービスの提供、関連するソフトウェア開発、教育・コンサルティングなどの各種事業を幅広く展開しております。

これまで、ルワンダ公共事業規制庁(RURA)にルワンダ衛星「RWASAT-1」を提供するなど、海外への衛星供給実績を有するほか、月へ向かう超小型探査機「EQUULEUS」の運用への参画、彗星探査ミッション「Comet Interceptor」における超小型探査機の開発など、地球周回軌道から月・深宇宙まで多数の開発・運用実績を有します。

今後は、IoT通信、地球観測、海洋VDES等に対応した人工衛星コンステレーションの構築を実現するとともに、月面活動にむけた衛星コンステレーション構築や深宇宙探査など、幅広いミッションに貢献する超小型人工衛星の開発及び実証に取り組んでまいります。