超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う株式会社アークエッジ・スペース(本社:東京都江東区、代表取締役 CEO :福代孝良、以下「アークエッジ・スペース」)は、2025年6月24日に打ち上げられた超小型衛星「AE2a」に搭載した、自社開発のオンボードコンピューター(OBC)の軌道上実証を行い、設定した全てのサクセスクライテリアを達成したことをお知らせします。
本OBCは1年以上にわたり軌道上で安定して動作しています。宇宙放射線環境下における放射線耐性についても軌道上で定量的な評価を行い、良好な結果が得られています。さらに、地上から送信したデータによるフライトソフトウェアの全面書き換えにも成功しました。
本成果は、衛星開発の現場で生じた課題を起点に、必要な技術を社内で構想・開発し、自社衛星への搭載から軌道上実証までを一貫して進める、当社の技術開発力を示すものです。
■衛星開発の現場から生まれた新世代OBC
OBCは、衛星に搭載された機器の制御、地上からのコマンド処理、衛星の状態を示すデータの管理などを担う中枢コンピューターです。
当社は、多種類・複数機の衛星を継続的に開発・運用する中で、従来採用していたOBCについて、部品供給の継続性や将来の性能要求への対応といった課題に直面していました。そこで、当社の衛星開発に適したOBCを自らつくることを選択し、本OBCを開発しました。
本OBCでは、高価で入手性が限られる宇宙用部品に依存せず、品質と供給体制が確立された車載グレード品を採用することで、部品供給の安定化と製造コストの削減を同時に達成しました。そのうえで、ハードウェアと、ハードウェアの違いを吸収するソフトウェア層を新たに構築し、軌道上実績のあるアプリケーション、通信プロトコルは従来のものを引き継ぎました。
これにより、既存の設計・検証結果や運用経験を最大限活かしながら、新世代OBCへのスムーズな移行を実現しています。
■軌道上実証の結果
本OBCは、AE2aの主ミッションから独立した実証機器として搭載されました。軌道上では、起動や通信、各種メモリ、外部インターフェース、温度、宇宙放射線環境下での動作、フライトソフトウェアの更新などを確認しました。
1年以上の運用において、本OBCに起因する異常リセットは発生しませんでした。また、内蔵SRAMを約36分周期で検査した結果、訂正不能なエラーは確認されず、検出されたメモリエラーはいずれもECCで自動訂正可能な範囲にとどまりました。これらによる運用への影響も生じていません。
温度についても継続的に計測し、発熱による動作上の問題がないことを確認しました。これらの結果から、宇宙放射線環境下における本OBC安定動作と、設計に組み込んだ放射線対策の有効性を確認しました。
■打上げ後のフライトソフトウェア全面更新に成功
今回の実証では、地上からのアップリンクのみで、フライトソフトウェアを全面的に書き換え、更新後のソフトウェアによる起動と各機能の正常動作を確認しました。
本OBCは、フライトソフトウェアを保存する領域を2系統備えたデュアルバンク構成を採用しています。稼働していない側の領域を書き換え、内容を確認した後に使用する領域を切り替えることで、更新時のリスクを抑えています。
超小型衛星では、一度に地上から送信できるデータ量が限られます。今回は、ソフトウェアを複数回の通信機会に分けて送信し、その間も従来のソフトウェアによる運用を継続しました。
軌道上でのリプログラミングにより、打上げ後も機能追加や不具合修正が可能になります。また、新たな機能を宇宙環境で試し、その成果を次の衛星開発へ速やかに反映できるようになります。
■社内発の技術を軌道上実証までつなげる開発体制
本OBCは、衛星開発の現場から生まれた課題意識をもとに、社内で構想・開発されました。当社はこの取り組みを地上での試作や評価にとどめず、AE2aにおいて軌道上での実証機会を設け、約1年以上の運用とフライトソフトウェアの更新まで進めました。
AE2aへの搭載にあたっては、本OBCを衛星の主ミッションから独立した「社内ホステッドペイロード」として扱いました。これにより、AE2aの開発・運用計画への影響を抑えながら、新たな機器の軌道上実績を先行して蓄積しました。
自社で技術を開発し、自社衛星で軌道上実証を行い、得られた成果を次の衛星へ反映する一連のサイクルは、当社の衛星開発における強みです。また、現場のエンジニアが必要と考えた技術を提案し、実際の宇宙環境で確かめるところまで挑戦できる開発カルチャーを表す取り組みでもあります。
■今後の展望
本OBCは、当社の衛星バスにおけるメインOBCとして採用され、今後開発する複数の衛星・プロジェクトへの搭載を進めています。さらに、姿勢・軌道制御用コンピューターをはじめとする他の搭載コンピューターへの展開も予定しています。
今後も軌道上で得られるデータを評価し、ソフトウェアの更新や機能向上を続けます。構想・開発から軌道上実証、次世代衛星への反映までを一貫して行うことで、超小型衛星の開発・量産・運用をさらに加速してまいります。
AE2aのバス部は、2021年度に経済産業省の支援を受けて採択された後、2023年度以降はNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援)/迅速かつ効率的な多種類複数機生産を実現する6U標準汎用バスとその生産・運用システムの開発・実証」による成果です。
■株式会社アークエッジ・スペースについて
アークエッジ・スペースは、超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う宇宙スタートアップ企業です。
“衛星を通じて、人々により安全で豊かな未来を”実現することを目指し、今後は地球観測、船舶向け衛星通信(衛星VDES)、光通信、低軌道衛星測位等に対応した超小型衛星コンステレーションの構築を実現するとともに、月面活動にむけた衛星インフラ構築や深宇宙探査など、多様なミッションニーズに対応する宇宙の開発利用を推進します。
本社所在地 :東京都江東区有明一丁目3番33号ドーム有明ヘッドクォーター3階
代表取締役CEO :福代 孝良(ふくよ たかよし)
設立 :2018年7月
WEB :https://arkedgespace.com/