超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う株式会社アークエッジ・スペース(本社:東京都江東区、代表取締役 CEO:福代 孝良、以下「アークエッジ・スペース」)は、大樹町(北海道広尾郡)内に衛星管制局(以下、地上局)を設置したことをお知らせいたします。本地上局は、静岡県牧之原市に保有する地上局に続く2局目の開設となります。
■日本北部エリアにおいて地上局に適した立地
地上局とは、衛星を運用する信号の送信や衛星からのデータの受信をするためのアンテナを有する施設です。今回設置した大樹地上局は、アークエッジ・スペースが開発・運用する複数の衛星と地上間の安定した通信を確保するための基盤設備として、重要な役割を果たします。
衛星から送信される電波は、一般的な携帯電話の電波と比較して非常に弱く、天候の影響を受ける周波数帯域も存在し、また、地上局周辺からの電波干渉を極力避ける必要があります。当社は以下の観点で候補地の検討を行い、これらの要件を総合的に満たす地域として、大樹町を選定しました。
・衛星との安定した通信に適した気象条件(晴天率の高さ)
・電波環境の良好さ(干渉の少なさ)
・宇宙関連設備への理解や協力体制の有無
大樹町は宇宙関連事業の誘致・支援に積極的であり、既に多くの宇宙企業が進出していることでも知られています。
■大樹地上局を設置する事業背景
アークエッジ・スペースは、次世代の海洋インフラの構築を目指して以下の3領域における研究・開発・実証および事業化を推進しており、今回設置する大樹地上局は、主に本事業において活用されます。
・VDES(VHF Data Exchange System)による海洋活動への貢献
VDESは、現在、大型船舶に搭載が義務付けられているAIS(船舶自動識別装置)を発展させた新たな通信規格です。AISに加えて、ASM(メッセージ配信)とVDE(衛星経由での通信も含めた双方向通信)の機能を追加したVDESは、衛星経由も含めた船舶向けの双方向のデジタル通信を可能にし、遠方海域にいる船舶とのリアルタイムな情報交換を実現します。本事業では、複数の超小型衛星からなる通信衛星コンステレーションを活用し、地上インフラに依存しない、グローバルかつ冗長性の高い海上通信ネットワークの実現に取り組み、海洋の安全や海上物流の効率化に貢献します。
・海洋観測技術の高度化
海上における安全保障や環境保全の観点から、すべての船舶の位置の把握は極めて重要です。しかし、AISが搭載されていない船舶や、AISの信号が意図的に切断・偽装(スプーフィング)されるケースもあり、AISを用いた既存の船舶位置の把握手法には限界があります。本事業では、船舶が発するマリンレーダなどの電波を衛星で観測し、それらの電波の到来方向を推定することで、AISに頼らない船舶位置の推定技術の確立を目指しています。これにより、より正確かつ包括的な海洋状況把握が可能になり、海洋の安全に貢献します。
・衛星IoTによる海上・陸上データの収集
陸上や洋上のセンサから取得される各種データ(気象、海洋、物流、環境等)は、これまで主に携帯電話網やインターネット網を介して収集されてきましたが、通信インフラが整っていない海域や遠隔地では情報の取得に限界があります。本事業では、衛星に省電力・長距離通信が可能なIoT通信機を搭載し、通信インフラが整っていない地域の陸上や洋上に設置されたセンサのデータを衛星経由で収集する技術を研究しています。これにより、通信インフラが整っていない地域も含めて、より広範で持続的なモニタリングを実現するインフラの構築を目指します。
■大樹地上局の概要
今回設置された大樹地上局は、アークエッジ・スペースの衛星運用基盤の中核を担う拠点のひとつです。以下の設備を有し、有明本社からの遠隔操作による衛星運用に対応しています。
・アンテナ高さ:5m
・パラボラアンテナ径:3.9m
・対応周波数帯:Sバンド(上り/下り)、Xバンド(下りのみ)、Kaバンド(下りのみ)
・IoT用通信アンテナも併設
なお、大樹地上局の設備の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「経済安全保障重要技術育成プログラム/船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証」に関わる活動の一環として整備を進めています。
■株式会社アークエッジ・スペースについて
アークエッジ・スペースは、超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う宇宙スタートアップ企業です。
“衛星を通じて、人々により安全で豊かな未来を”実現することを目指し、今後は地球観測、船舶向け衛星通信(衛星VDES)、光通信、低軌道衛星測位等に対応した超小型衛星コンステレーションの構築を実現するとともに、月面活動にむけた衛星インフラ構築や深宇宙探査など、多様なミッションニーズに対応する宇宙の開発利用を推進します。
本社所在地 :東京都江東区有明一丁目3番33号ドーム有明ヘッドクォーター3階
代表取締役CEO :福代 孝良(ふくよ たかよし)
設立 :2018年7月
WEB :https://arkedgespace.com/